【簡単・数分】心が散漫になりやすい時に。注意を『今』に戻すマインドフルネスの始め方
心が落ち着かない、注意が散漫になりやすいあなたへ
日々の忙しさの中で、ついつい心が色々な場所にさまよってしまう、という経験はありませんか。
目の前のことに集中したいのに、過去の出来事を思い出したり、未来の心配をしてしまったり。考え事が次々と浮かんできて、頭の中がごちゃごちゃになってしまうこともあるかもしれません。
このように心が散漫になるのは、特別なことではありません。人間の心は本来、様々な思考や感情、感覚の間を動き回る性質を持っています。しかし、それが続くと、目の前のタスクに集中できなかったり、心が落ち着かず疲れてしまったりすることがあります。
この記事では、心が散漫になりやすいと感じる時に、注意を優しく「今、この瞬間」に戻すためのマインドフルネスの基本的な考え方と、誰でもすぐに始められる簡単な実践方法をご紹介します。
マインドフルネスとは、心の「今」へのトレーニング
マインドフルネスとは、とても簡単に言うと、「今、この瞬間に、意図的に、評価をせずに注意を向けること」です。
私たちの心は、過去の後悔や未来への不安、あるいは目の前のことへの「良い」「悪い」といった評価など、常に様々な情報や思考で忙しく動き回っています。マインドフルネスは、そのような心の動きに気づきながらも、いったん立ち止まり、「今、ここ」で起こっていることに意識を向ける練習です。
これは、「何も考えない」ことではありません。思考や感情が浮かんできても、それを否定したり、深入りしたりせず、「あ、何か考えているな」とただ気づき、優しく注意を今この瞬間に戻すトレーニングなのです。例えるなら、さまよう子犬を無理やり引き戻すのではなく、「あ、あっちに行ったね。さあ、こっちだよ」と優しく呼び戻すようなイメージです。
心が散漫になりやすいと感じる時、それは心が過去や未来、あるいは目の前のことから離れてしまっている状態です。マインドフルネスは、意識的に「今、ここ」に注意を戻す練習をすることで、心のさまよいに気づきやすくなり、必要に応じて意識を集中させ直す助けとなりえます。
なぜマインドフルネスが、忙しいあなたに適しているのか
「マインドフルネスと聞くと、じっと座って長い時間瞑想しなければならないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、マインドフルネスは特別な場所や時間を必要としません。
日常のほんの数分、あるいは一瞬の「気づき」から始めることができます。忙しい日々の中でも、電車の中、休憩時間、あるいは歩いている時や食事中など、ちょっとした隙間時間を使って実践することが可能です。
特に、心が散漫になりやすいと感じる時は、長時間の練習よりも、短時間でも良いので、意識的に「今」に注意を戻す練習を繰り返すことが有効です。まずは1分、あるいはそれ以下の短い時間から試すことができます。
心が散漫になりやすい時に試せる簡単なマインドフルネス実践
ここでは、心が散漫になりやすいと感じた時に、すぐにできる簡単なマインドフルネスの実践方法をいくつかご紹介します。特別な準備は一切不要です。
1. 呼吸に注意を向ける1分間の瞑想
最も基本的で、どこでもできる方法です。
- 楽な姿勢で座ります。椅子に座っていても、床に座っていても構いません。背筋を軽く伸ばし、肩の力を抜きましょう。手は膝の上や腿の上に置きます。
- 目を閉じるか、視線を軽く落として半眼にします。
- ご自身の呼吸に注意を向けます。鼻から入る空気、肺が膨らむ感覚、お腹の動き、口から出ていく空気など、呼吸が体にもたらす感覚にただ注意を向けましょう。呼吸をコントロールする必要はありません。自然な呼吸を観察します。
- 様々な考え事や感情が浮かんできても、それは自然なこととして受け流します。「考え事が浮かんできたな」と気づいたら、自分を責めることなく、優しく注意を再び呼吸の感覚に戻します。
- これを1分間、または心地よいと感じる時間だけ続けます。
- 終わる準備ができたら、ゆっくりと目を開け、周りの空間に意識を戻しましょう。
この練習は、心がさまよっていることに気づき、注意を「今、ここ」にある呼吸に戻す、というマインドフルネスの核となる動きを練習できます。
2. 耳に聞こえる音に注意を向ける1分間の練習
視覚からの情報が多い時や、座る場所がない時にもできる方法です。
- 立ったままでも座ったままでも構いません。体の力を軽く抜きます。
- 目を閉じるか、視線を軽く落とします。
- 耳に入ってくる様々な音に注意を向けます。遠くの音、近くの音、大きな音、小さな音。
- それぞれの音に対して、「何の音だろう」「この音は好き/嫌い」といった判断や分析をせず、ただ「音が聞こえているな」と観察します。
- 音に対する考えや感情が浮かんできても、それは自然なこととして受け流し、再び耳に聞こえる音そのものに注意を戻します。
- これを1分間程度行います。
この練習は、私たちが普段意識しない音に注意を向けることで、「今」の瞬間に意識をグラウンディング( grounding: 現実に根ざすこと)する助けになります。
3. 目の前のものに注意を向ける1分間の練習
仕事中や移動中など、ふとした瞬間にできる簡単な方法です。
- 目の前にある、何か一つのもの(例えば、コーヒーカップ、ペン、机の表面、電車の手すりなど)を選びます。
- そのものに注意を向けます。形、色、質感、光の当たり方など、目で見てわかる細部に意識を向けます。
- 「これは〇〇だ」「〇〇な色だ」といった思考が浮かんできても、それに囚われず、ただ見えている情報そのものを観察します。「良い」「悪い」といった評価はしません。
- 観察中に心が他のことへさまよい始めたら、「あ、考え事をしたな」と気づき、優しく注意を再び目の前のものに戻します。
- これを1分間程度行います。
この練習は、視覚という身近な感覚を使って「今、ここ」に意識を集中させる練習になります。
実践する上での「コツ」と「注意点」
マインドフルネスを始めるにあたって、いくつかの大切なポイントがあります。
- 「何も考えない」を目指さない: マインドフルネスは「心を無にする」ことではありません。思考や感情が浮かんできても、それは自然な心の働きです。大切なのは、それに気づき、判断せず、優しく注意を「今」に戻すことです。
- 評価しない: うまくできた、できなかった、他の人はもっと集中できているだろうか、といった評価や比較は不要です。ただ、今、この瞬間に気づく練習です。
- 雑念が浮かんでも大丈夫: 練習中に心がさまようのは当たり前のことです。雑念が浮かんでも自分を責めず、「あ、また考え事をしたな」と気づき、優しく注意を戻す、そのプロセスこそがマインドフルネスの実践です。
- 完璧を目指さない: 最初から長く続ける必要はありません。1分でも、30秒でも構いません。無理なく続けられる時間から始めましょう。短い時間でも、意識的に行うことに意味があります。
- 自分に優しく: うまくいかないと感じる日があっても構いません。焦らず、根気強く、そして何より自分自身に優しく向き合う姿勢が大切です。
まずは短い時間から、優しく試してみましょう
心が散漫になりやすいと感じる時、それは心が休息を求めているサインかもしれません。
マインドフルネスは、そんな心の状態に気づき、「今、ここ」に優しく注意を戻すことで、心の落ち着きを取り戻す手助けとなります。難しいことや特別なことではなく、誰にでもできる心のトレーニングです。
まずはこの記事でご紹介した簡単な方法を、一日のどこかで、ほんの数分から試してみてはいかがでしょうか。完璧を目指す必要はありません。心がさまよっていることに気づき、優しく「今」に戻す、その一歩一歩が、心の安定へと繋がっていくことでしょう。